塾長の独り言 -
「鉄は国家なり」
令和2年4月9日
「鉄は国家なり」は19世紀に武力でドイツが統一されたころに言われ始めた。
大砲や鉄道に欠かせない鉄は国力の源泉だった。
ドイツを範とした明治政府が今の北九州市に建設したのが官営八幡製鉄所だ。
流れをくむ八幡製鉄所が富士製鉄と合併し新日本製鉄が発足したのが50年前の3月。
個人的には、そのあくる年に新日鉄に私は入社した。
売上高一兆円企業が誕生し「正規の合併と」騒がれた。
高度成長をけん引するまさに「鉄は国家」の時代だった。
世界遺産にもなった八幡製鉄所はこの4月に他の製鉄所と統合され名称が消える。
新日鉄の後身の日本製鉄による合理化だ。広島県の呉製鉄所は閉鎖、和歌山製鉄所の高炉の休止。
中国の攻勢にさらされ昔日の面影は薄れた。
「鉄は国家」と呼ばれたのも、製鉄所が各地で多くの雇用を生み出し地域を支えてきたからだ。
コロナ不況が底知れず深まっていく中、今回の合理化による地域の打撃を心配する声は尽きない。
今後の日本を支える産業は何か。時代に応じた産業の変化を敏感に感じる企業のみが生き残る。
そして、急速な産業変化に伴う貧困対策も絶対忘れてはならない政治課題である。