塾長の独り言 -
優子-3
令和4年6月15日
その後、何回か電話してとある駅前で会うことにした。
午前11時の約束の前に車で着いた。
向こうから、歩いてくる女の人が優子に違いない。
昔より、ちょっと小太りに見える。面影は昔のままだ。
何の疑いもなく声をかけた。「久しぶり…」「そうね・・・」
何十年ぶりかの再会なのに、心の中は高ぶっているのに、なぜか感動の表現はできなかった。
何から話せばいいのか、迷っていると向こうから「元気だったの」と聞いてきた。
「うん、どこか食事に行こうか」どこに行こうかと迷いながら聞いた。
「どこでもいいよ」
今まで、行きたいと思っていた、田舎の料理屋に行くことにした。
車の中では、ぽつぽつと昔を思い起こしながら話をしたが、何故メールが来なくなったのかは
目的地に着くまで聞けなかった。
梅雨の時期であり、外はしとしとと雨だった。
優子は寒そうだったので、きていた上着を着せて車場からしばらく歩いて玄関についた。
田舎の料理屋で、見た目もいかにも古めかしいからか、お客は一人もいなかった。
料理を頼んで、またしばらく沈黙が続いた。
・・・・
優子は、どうかというと静かでおとなしい性格なので、この沈黙が嫌と感じる子では
ないことは分かってはいる。
食事が終わり、料理屋の周りに2~3軒ある地元の生産物を展示している場所を見て回った。
もう、お互いに60歳を目の前にした年齢になっていた。