塾長の独り言

一本の桜の木

平成26年3月10日

また春が来る
その木は、細い道の先の丘の上にあった
春になると、誰も来ないいのに しだれた枝に覆いかぶさるように桜の花が咲いた
その時期になると、毎年二人でそこに行って手持ちの弁当を食べた

ただあの日だけは、4月の中旬だというのにまだ桜は満開ではなかった
もともと、いつも麓よりは数日遅れて咲くのが普通だったが、その年は特別だった
二人が桜の木の下についた頃は、陽気のせいもありお互いの手は少し汗ばんでいた
桜の木の下で、いつものように手持ちの弁当を食べた
無理にいつもと同じように話したり振る舞ったりしたが、あの日はいつもと違っていた

あの時以来になる、数十年もあなたに会っていない
あなたは東北に住み、流産を一回したが二人の子供を生んで平凡な生活をしていると聞いていた
50台の後半にはちょっと重い病気をしたとも
そういえば、あなたは昔から体が丈夫な方でなかった
二人で雨に濡れたりしたときには、あなただけが風邪をひいた

そんなあなたが、最近入院していると聞いた
どんな病気なのかはわからない、大丈夫だろうか
さびしい思いはしてないだろうか
不安になってはいないだろうか
病気は回復の方向に向かっているのだろうか
心配だけがつのる、一日も早く元気になってください

数十年ぶりに見たあの桜の木は、あの時と同じように桜の花がしだれるように咲いている
木の下には私が一人
今あなたは遠くの人の妻、わたしはあなたに何もしてあげることができない・・・・・・・・・
・・・・・・ただ、わたしは祈るだけ