塾長の独り言

深秋の夕陽

平成27年10月26日

日中は、陽の当たる場所はちょっと汗ばむが、夕方になると、一枚着ないと寒いくらいだ。
数日好天が続き大気に塵が多いせいか、茜色の空の夕日が真っ赤で普段より大きく見える。
日中の太陽では気づくこともないが、まさに沈もうとする夕陽は予想以上に速く地平線の下に消えていく。
地球はこんなにも速く回転しているのだと驚きだ。
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少し肌寒くなってきた。自分の着ていた薄いブレーカーをそっと肩からかけてやった。
彼女は黙ったままだが、寒かったのだろう、掛けたブレーカーの両側を掴んで胸元まで巻きつけた。
時折、周りの空気を乱し、冷たい風が二人をせかすように吹き抜けていく。
まもなく、外灯ひとつ無い海辺の堤防は真っ暗だ。
ながい沈黙のままだが、お互いが何を考えているのかは手に取るように理解できる。
あなたには、私よりもっとあなたにふさわしい人がいる筈よ。私はあなたを駄目にするわ。
彼女はポツリとつぶやくように言った。
二人が一緒になるには、彼女の身の上にある余りにも多くの困難もこれまで十分聞かされて知っていた。
だからこそ、二人なら乗り越えていけると思っていた。
随分時間が経ってから、これで別れることにするという事なのかと彼女の顔を見た。
黙ってうなづく彼女の頬をつたう二筋の涙が愛おしかった。
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あなたも、あなたにふさわしい人にめぐり合え、穏やかな毎日がつづいているだろうか。
この次期、青春の甘酸っぱい思い出が昨日のように思い出される。
沈んでいく真っ赤な夕陽を眺め、もう逢えないあなたの幸せを心から祈っています。